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レトラコピーHT


昨日、近所の竹の台児童館のマルオさんと、色々お話を聞いていて出た話題。

日々子供たちに向き合っており、パソコンを勉強する時間がなかなか取れません。
ところが、いつのまにか神戸市内の他の児童館が、竹の台以外全て、パソコンで毎月の「児童館の案内」を作るようになってしまいました。
このまま手書きでパソコンを使わずにいていいのでしょうか。写真ぐらい載せたいのですが。


パソコンを活用できていない現状に、かなりあせっている様子。いくつか質問をしてみました。

T:現状の制作方法はどうされていますか?

M:ブルーの方眼が入ったPPC用紙(B4)にイラストのカットや題字などを張り込み、文字は基本手書き。こんな古いやり方で恥ずかしい。

T:台紙に貼り付けてデザインをする手法は、10年前までプロが普通に行っていた手法。むしろ伝統的な良い手法ですよ。


実際、パソコン上で実物と異なるサイズでデザインをすることは初心者にはかなり難度が高い。1/1、つまり実物大での版下作りの方が人間の認知がいきわたり易く、デザインの質、速度において勝る点が多いと思う。
そういえば、初期のMacintoshWYSIWYG(What You See Is What You Get)「見えるものが得られるものと同じ大きさであること」───モニターに映る文字の大きさやレイアウトが印刷されるものと同じ大きさであることが重要視された。(今は違います。)
B全のポスターをモニター内でレイアウトして、最後に等倍でプリントして、あまりのバランスの悪さに唖然とした記憶はデザイナーなら多かれ少なかれあるものだと思う。
紙に貼るという行為自体、究極のインタラクティブだしね。


逆にパソコンで作成するメリットは何だろうか?

  1. 一度入力したデータの2次利用が容易
  2. メールで来た原稿、エクセルのグラフなど、既にデジタル化しているデータを反映しやすい
  3. 写真加工、ロゴ制作など、表現の幅が広がる
  4. 完成した案内をPDF化して、ホームページに掲載ができる
  5. 原稿への検索・置換 データベース化


一通り考えてみたが、現状でも以下のような対応が可能。

  1. →従来原稿のコピーで実現可能
  2. →一度プリントアウトして張り込めば良い(表組み、タイトルなどは既にそうしている)
  3. →縮小コピーしてレイアウトを提案(後述)ロゴ類は何か専用のソフトを探して紹介予定
  4. →全体を1枚の画像としてスキャンしPDF化すればOK
  5. →不可能


結局、パソコンでの情報化が不可欠になってくるのは、原稿や情報への検索などデーターベース機能が必要になった場合のみだと思うけど、今のところ、児童館に、そこまでの情報化は求められていない。
だいたい、情報化には手間がかかる。最初の設計には経験と深い洞察が必要だし、その後の情報更新には弛まない努力が必要だ。それにかけるコストはかなり高くなる。ならば、子供へのケアが最も重視されるべき組織なのだから、立派なレイアウトより、手書きの「児童館の案内」の温かみのほうが、ユーザーが安心感を感じると思うんだけどどうでしょうか?*1


と、言うようなことをお話して、でも、写真ぐらいは載せたいよねーということで、以下をご紹介。

  1. キャメラ、今ならデジカメで撮った写真をプリントアウトする
  2. コピー機で必要な大きさに縮小する
  3. 必要なサイズに切り取って(トリミング)台紙に貼り付ける


→マルオさんは大変驚いていらっしゃったが、これも昔は当たり前だった手法。単純だけど思いつけないのは、デジカメの普及以後はパソコンを使わずに写真を扱うことは考えにくくなっているためなのかもしれない。盲点ですかね?


また、このときひと手間加えると上がりが良くなる。
写真をコピーすると、たいてい黒くつぶれる。これはパソコンで打ち出してもプリンターによってはそうなってしまいます。
そこで、コピーするときにレトラコピーHT(右写真)を挟んでコピーすると、階調にちょっとニュアンスが残り、コピー後も写真が多少は見やすくなる。HTはハーフトーンの略なんだろうね。
ぼくがこれを入手して、コピー機での雑誌作りに使用していたころから15年以上経つ。もうそんなインディペンデントな活動はしないし、だいたいパソコンを使うようになってからは、全くの用無しだったんだけど竹の台児童館でなら役に立ちそうだ。
一方、これを新規に入手するのはもはや難しいと思う。Letrasetは国内販売代理店が倒産など、色々あったので今のラインナップがどうなっているかちょっとわからない。多分、白いスクリーントーンでも代用は可能かもしれない。透明部分の透過度にも寄ると思う。だいたい、今の若い子なら、パソコンを使ったほうが早いので、必要な人はいないと思うが。


さて、以下サンプルを作ってみた。

建物を撮影

(1)
オリジナルの白黒写真
元になる写真。コンクリートの影やくすみが綺麗に写っている。
(2)
(1)をそのまま
コピー
普通にコピーをすると濃い灰色の影が全て黒くつぶれてしまう。一方で薄い灰色は白く飛んでしまう。
高いコントラストでカッコいい!といえなくもないが、何が映っているかは確実に伝わりにくくなる。
(3)
レトラコピーHTを使用
白い網点が全体に入る。(1)よりは見にくいが、(2)よりは見やすい。
(4)
(3)をさらに
コピー
(3)は原稿なので、実際はさらにコピーすることになる。こうした孫コピーでは、白い網点が潰れたり、コピー機のセンサーと干渉してモアレが発生する場合もある。それでも(2)よりはまだ見やすいといえる。
(5)
パソコンで加工
パソコンの画像処理ソフトで、ハーフトーンスクリーン処理*2をした場合。明るいところの白い網点は大きく。暗いところの白い網点は小さくと、キメ細やかに網点で表現している。新聞や雑誌など実際の印刷はこの工程を通るため写真が見やすくなる。家庭用のプリンターでも、レーザープリンターはこの機能が搭載されている場合が多い。

人物を撮影

(1)
オリジナルの白黒写真
元になる写真。ほぼ逆光の写真。ミニコミ誌など、原稿提供者がプロでない場合、こんな写真しかない場合が多い。
(2)
(1)をそのまま
コピー
普通にコピーをすると濃い灰色の影が全て黒くつぶれてしまう。一方で薄い灰色は白く飛んでしまう。人物は顔が潰れると何がなんだかわからない。
(3)
レトラコピーHTを使用
白い網点が全体に入る。(1)よりは見にくいが、(2)よりはまし。
(4)
パソコンで加工
パソコンの画像処理ソフトで、ハーフトーンスクリーン処理をした場合。
モニターの解像度と印刷の解像度は異なるので、モニター上ではあまり綺麗に見えないが、印刷ならもう少し詳細に描画が可能。


今回も、役に立つ人が極めて限られた備忘録だなぁ。


関連エントリー「特殊印刷メモ」なぜか忙しいときに限って、こういう細かいサンプルを作りたくなるみたい。次はRGBからリッチなグレースケール写真の取り出し方をやろうかな。と、思ったらリンク先にちょっと書いてあるね。考えることは変わらずか‥‥


○関連サイト

*1:手書きとワープロを比べたら、手書きのほうが子供の面倒を見てくれそうな気がすると指摘をすると、竹の台市民は竹の台児童館の案内しか見ず、比較をすることはないとの事。なるほどそうだ。

*2:フォトショップを使用した場合、イメージ>モード>モノクロ2階調 で、ハーフトーンスクリーンを選択する。設定はこんな感じ。●