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マティスとボナール


佐倉って遠い。
安西水丸さんの小説で読んだことしかないけど、こんなに遠かったのかと実感。千葉からまだ先なのだ。子供のころ、北習志野に住んでいたんだけど、あそこは東京寄りだしね。千葉って広い。


佐倉駅では少し小雨が降っていて、数日前から若干肌寒かったのが、さらに気温が下がっている。あいにく薄着しか持ってこなかったので、川村記念美術館への送迎バスを震えながら待つ。


美術館へは20分ほどかかるらしい。バスの中で、駅で買った赤飯のおにぎりとサンドイッチをミネラルウォーターで流し込み、ぼんやりと外を見る。サンドイッチは少し変わった味がしたがあまり気にしないことにした。
おきまりの田舎の風景。兵庫県でも神戸を少し離れたらこんな感じ。大きな道路をいくつも超え、ようやく川村記念美術館に近付く。
急にエメラルドグリーンに輝く大きな木々が飛び込んでくる。植樹なんだろうけど実に美しい。庭園技術を感じた。郊外の美術館はあたりが荒涼としていることが多いが、ここは大きな公園になっており素晴らしい。入園料を払い、木々の茂った湿った斜面をゆっくりとおりる。


大きな池があり、遠くに搭が見える。
のんびりとしてのどかだ。
白い水鳥がゆっくりと羽を動かしている。





振り返った美術館の入り口の横に、巨大なストラクチャーが存在する。
フランク・ステラの作品。
教科書で見たことがあった気がするが、現物を見るの初めてだ。
この美術館は、かなり現代芸術に力を入れているようだ。





1階が常設展になっており、企画展は2階だった。
一通り回った後、八重樫春樹 氏(川村記念美術館顧問/美術史家)の「マティスとボナールを巡る芸術的環境、人間的環境」という講演を聴く。体調が悪く、あまり集中できなかったが、スライドが面白かった。よく、なんだかわからない人の肖像画があるけど、それは誰で、どういう人間関係だったか、紐解いて見るのは楽しい。


講演を聴いた後、もう一度企画展を観てまわる。やっぱり、聞いてみたほうがわかることもあるよね。
ところで、最近「ルオーとマティス」という展覧会を観たので、どうしても比べてしまう。だいたい同じ時期にマティスの名前が入った展覧会を国内で2ヶ所で行うのだ。どうしても作品がばらけてしまうんじゃないかと思う。まず、企画や構成は、正直、ルオーとマティスの方が良かった。展示方法が論理だっているし、両者の相違がわかり易い。面白く観れた。
こちらの「マティスとボナール」の方が、展示方法にセンスやダイナミズムを感じた。入り口に大きな緑があったり、はるかかなたの壁に赤が鮮やかに映えていたり、最後にオレンジが添えてあったり。他にも見せ方が印象的な展示がいくつもあった。こういうのは何か心に残る気がする。


図録のできは圧倒的に「マティスとボナール」の方が良い。ハードカバーということだけではなく、印刷の再現度やレイアウトや書体のチョイスが良く、全体に読みやくなっている。800円の差は充分あると思うなぁ。
マティスの作品に関しては、おなじみのJAZZなど印刷されたものはどちらでも見れた。川村さんの方が大きな作品や、有名な作品が目に付くが、名前が先にくるのでそれは当然だと思うし、個人的には松下さんの方が少ないけど印象が濃かった気がする。まぁ個人的な感想なんだけど。


帰り際に常設展も覗いてみた。
これが、かなり良くてびっくり。やっぱり、常設展に美術館の実力が出ると思うんだけどどうだろうか。バスの時間があり駆け足になったが、思わず足をとめ、メモをする作品が多々あった。遠くて時間がかかったけど、来た甲斐を感じたのは、常設展のほうだったなぁ。


そういえば、京都近代美術館のマティス作品「鏡の前の青いドレス」が来ていた。
京都近代美術館ではこないだまで東京でやっていたルノワールをやるそうだ。ルノワールはそんなに好きじゃあないんだけど、観にいけたらいいな。

■INFORMATION
マティスとボナール ―地中海の光の中へ―

  • 千葉展 2008年3月15日(土)〜 5月25日(日)川村記念美術館
  • 神奈川展 2008年5月31日(土)〜 7月27日(日)神奈川県立美術館 葉山


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