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六本木の朝

六本木「メイド・イン・USAカタログ」時代に平凡企画センターがあったビルを見に行く。
初夏の朝には独特の匂いがあると思う。虫の音やむっとした熱気の深夜のあの肌合いとは異なりとてもさわやかだ。個人的には、穂高の朝を思い出す。


「ポパイの時代」の巻末のページを片手に歩き出す。
昨晩は、この本の中の証言者のなかで、唯一お会いしたことのある、新谷雅弘さんの対談を読んでずいぶん懐かしい気持ちになった。
20年近く前だけど、京都のインアカでお世話になったことを思い出す。
安西水丸さんや原田治さん、ペーター佐藤(故人)さんら4人の中で、結局一番勉強をさせていただいたのは間違いなく新谷さんだったように思う。新谷さんからいただいた、手書き&コピーの編集者の心得(1991/10/24 18ページ)は今も持っている。


ぼくが、ムーヴィーやその元となるイラストレーションを委託する際に、スタッフに良く言うこと、


「ムーヴィーやイラストレーション委託するの際のディレクションは、編集の仕事ととてもよく似ている。文字通り、しっかり集めて、丁寧に編む仕事なんだ。」


ということは、この時の経験によることが大きい。(直接そういうお話があったわけじゃなくてね。)だいたい、ぼくがイラストレーターよりもグラフィックデザイナーを志したのも、音楽ゲームにアートディレクション制を持ち込んだことも(両方とも決して成功しているとはいえないが)新谷さんの影響なんだよね。
お元気なんだろうか。一度お会いしてお礼を言いたいものだと思った。


「ポパイの時代」は、すでに前世紀の雑誌の、それも創刊から3年にも満たない期間を物語ったものではあるのだけれど、それは決して単なる過去ではなくて、少しずつ形を変えながら今なお多くのクリエイティブの現場で繰り返されていることのように思う。
音楽ゲームが少しずつ変わって行く*1としたら、おんなじ理由なのかもしれない。示唆に富んだ貴重な証言集だと思う。


銀座のビルは、最初、もっと右側のひなびた洋風の建築物かなと思ったが、よく見ると、カッチリ、ステインレスのフレームのビルだった。
今のマガジンハウスらしいよね。
表通りに出ると右手に東京タワー。
なるほど。六本木とはそういう街だったのか。

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*1:そして、それは見る方向に寄ったら、おそらくダメになっているのかもしれない。