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incidental affairs

阪神なんば線

GWといっても、家族でどこかに行くわけでもなく、ひとりぶらりと大阪へ、サントリーミュージアムで開催中の「インシデンタル・アフェアーズ」を観にいってきました。神戸から大阪港駅へ行くのには、従来なら大阪(梅田)経由で地下鉄に乗り換え、本町あたりでまた地下鉄を乗り換えるのですが、今回は新しく開通した阪神電車の「阪神なんば線快速急行近鉄奈良行」に乗ってみました。これだと、九条駅で地下鉄中央線にダイレクトに乗り換えが可能。九条から大阪港は数駅です。わずかではありますが、安いし早いし気づいて良かった。プチお得!→
ちなみに「阪神なんば線快速急行」の車両は外観はあんまり変って見えないですけど、シートが一人ずつ分かれています。最近阪神に乗ること多いんだけど、阪神の新車両はおしなべてデキが良い。阪神見直した。w

大阪港

大阪港駅周辺は、海遊館ができた20年ほど前に良く行っていましたが、最近はめったに行かないので10年ぶりくらいかも。何か外国人観光客が以前より増え、ただでさえ港付近の無国籍風な印象がより強められた様子。広い道や背の低い建物など、昔一度だけ行った那覇を思い出します。










展覧会

サントリーミュージアムも久しぶり。今回も招待券を勤務先のスタッフにもらわなければ来なかった可能性大。でも「インシデンタル・アフェアーズ」という言葉の響きには何か惹かれるものがありました。入り口のポスターは退色したのではなくこんな色。ホロ素材の紙(アルグラス?)に透明度を調整した白インクなどで文字を切り抜いた品の良いデザイン。17人の名前がアルファベットで記され、一人一文字ずつI N C I D E N T A L A F F A I R Sと順番に綴ります。これ発見したとき学芸員の人嬉しかっただろうな。きれいですが微妙な照明の映り込みを要求するため、屋外には向かないデザインです。蛍光ピンクでカタカナのタイトルを目立たせていますが、かえって品がなく思いました。ここまでやるんならあえて目立たせなくても…。それがなければ買っても良いかなと思ったのに。だって、800円の図録が売り切れ、手持ち無沙汰でしたので。(1500円)


何かこう不親切だと思うのですが作品の説明や解説はなしです。下記リンクにとても丁寧な解説がありますんで、そちらでよろしくお願いします。ここでは自分のメモ用に、どちらかというとすごくどうでもいいことを中心に。

エリザベス・ペイトン(Elizabeth Peyton1966コネチカット州出身NY在住)

workaholic社という会社の所蔵品が多い。ワーカーホリック(仕事中毒)って日本以上に欧米ではネガティヴな意味だと思うんだけど、それをあえて会社名にする人たちがいるのね。

ミシェル・ロブナー(Michal Rovner1957イスラエル出身NYおよびテルアビブ在住)

正面左右3面のスクリーンに映像を投影。どこでループするのか、パターンを発見するのが楽しい。正面は回転する環状の群集から人間が発散する作品。(これが《More》かな?)
左右の映像は隊列が左右から出てきて中央で重なり再び左右へ散るというもの。これは2パターンを繰り返していて、左右がてれこになっているので、実際には3面別の映像を流しているように配慮されている。(これが《Order》かな?)CGか実写かは良くわからなかった。多分実写映像素材をもとにコンポジットで仕上げたと思う。

横井七菜(愛知県出身1983)

額縁に埃が積もっていた。これは掃除しないのかなぁ。
すごく挑戦的なキュレーションなだけに残念です。

フランシス・アリス(Francis Alÿs1959アントワープ出身メキシコシティ在住)

映像作品《愛国者たちの物語》を15分程度見た。

  • 男が羊をひいている。この一頭のみ紐でつながれている。
  • 画面に羊が増えるたびに前の羊の後につく。
  • 羊は紐につながれているのをのぞき、20頭まで増える。(合計は21頭 人間を入れて22区画)
  • 20頭出現し、一周がいっぱいになると、最初にひっぱっていた羊が画面の外に消える。
  • 以下、羊は入ってきた順に消え、結果今度は男が羊を追う形になる。これは面白い仕組み。
  • 羊の増減は一瞬であり、最初はいつどこから出てくるのかはわかりにくい。ぼくは①画面外②柱の影から出るときに追加③縦に羊が並んだとき④柱の影自体の中で処理の4種を仮定しましたが、一番無難かつ無理のない①のみ、しかも位置すら固定だった。
  • 人物の一周は約32秒。
  • 柱の影は動かないように見えた。後述するが20分程度あればある程度動かないと本来おかしい。
  • これはおそらく3DCG。実写で一周させたものをサンプルにコンポジションでというのも可能だけど全体の質感やモーション(手前のゾーンで必ず羊が走るなど)からおそらくモデルだと思う。

というわけで、21頭の羊が出入りするわけで、ワンループはおそらく20分以上かかると思うが、おそらくパターンは全て見たと満足して先へ行く。隣の田中巧起のインスタレーションの音がここまで聞こえたのは残念。防音できないのなら、会場レイアウトで対処して欲しかったなぁ。
ところで、組作品が会場のあちこちにあったけど同じ人だったのね。

宮島達男(東京出身1957茨城県在住)

《MEGA DETH》壁面一面のブルーの7セグ。

  • 7セグメント青色発光ダイオード日亜化学工業が高輝度の青色発光LEDを発売したのが1993年あたり。この作品が作られた1999年頃はまだ価格も高かったと思います。2009年現在では若干値段はこなれてきましたが、それでも赤や緑よりは高いです。ちなみに白色LEDが最近は高いです。照明用に置き換わってきてますからね、LEDは。詳細は共立エレショップで。ちなみに、今買うと文字高:25.20mmで一個378円。この作品に使用されているのは実際は40mmくらいはあったような気がします。当時はさらに入手性は低かったと思いますが、これはぜひ青を使いたかったでしょうね。PS2のインジケーターに青色が搭載されたのが2000年で、青色がまだ新鮮に感じていた頃だったわけですし。
  • 数量:ブルーの7セグは約1,700個ってパンフに書いてあるんですよね。念のため数えてみました。入り口から短辺:23個、長辺:61個、短辺:30個、高さ:16個、で(23+61+30)*16=1824個。何で約1,800個って書かないのか謎。ビエンナーレの設置時はもう少し小さかったのかもしれないですね。
  • システム:基盤の接続は縦に数珠繋ぎ。全体を一気に消したり、だんだんと点いてきたりという演出の制御には、電源以外にコントロール線もいるかなぁと思ってましたが、良く考えたら消すのは電源を切ればいいし、だんだんに点くのはチップに組み込めるので、案外電源だけかもしれません。こんだけ数が多いと断線の検知もえらごとなんで、シンプルな設計が望ましいですよね。一枚一枚基盤を調整なんかやってられません。

  • 真の死:そういえば会場に入ってすぐに気がついたのですが、壊れたLEDがありました。最初〝A〟があったので、16進かなと思ったけど、どうもLEDのセルの不点燈みたい(この場合は8)です。探したら〝E〟もあったね。これはセルが2つアウト。でも10年で1/900の不具合発生なら日亜化学工業はやっぱり優秀なんじゃないでしょうかね?きちんと交換してないのは、当時の部材が廃番品で、全く同じように発光する同等品が入手ができないと見たんですがどうでしょうか?仮にそうだとしたら《MEGA DETH》という「大きな死とその後の再生」をテーマにした作品を構成する最小単位が、部品の寿命から緩やかな死に瀕しているいう現実に、複雑な面白みを感じました。

偶然ではない、パターンが見える。

インシデンタル・アフェアーズ〜うつろいゆく日常性〜というサブタイトルから、偶発性を意図した演出や作品、そして論評も多いかと思います。けど作る側からすると人間が作る以上、やっぱりパターンはあるし計算しないとできないんですよ。
家のマンションのリヴィングの窓から明石海峡大橋が見えて、夜はとても複雑なライトアップパターンが演出されておりこれは石井幹子さんの作品といって良いかと思うんですが、たいへん豪華で一見の価値はあります。でも住んでいて、毎日見ていて、それでも感動することは、マンションの反対側に落ちる夕日のつくる「ピンクからブルーへのグラデーションだったりするわけです。
自然の持つ複雑さや偶然性がつくる美しさには絶対かなわないんですよね。ヒトが今の技術、プログラム、さまざまな技法で複雑なパターンを作ってもね。
「偶然」があるとすれば、努力し続けた人間が、たまたま本人の能力を明らかに超えた作品を生み出したときで、それは偶然だったな、まわりとの関係性のお陰だろうな、もう一度やっても多分無理だろうなと、そういうように思います。

新開地

帰りは梅田のヨドバシカメラでカミさんに頼まれたトースターを買って、新開地行きの阪急特急に乗り、新開地アートヴィレッジで「エグザイル/絆」を観て帰りました。*1血煙と硝煙。銃撃戦はすさまじい物がありました。ホテルの吹き抜けで二階まで硝煙が漂ってくるんですからねぇ。1987年の返還直前のマカオが舞台なんですが、けっこう古い町並みが残っていて驚きました。一度行ってみたいですね。マカウ。まぁ新開地も独特の雰囲気を数十年維持しているけどね。

●参考サイト

*1:冒頭の数分を見逃したのは残念。そういうのあんまりないんだけどなぁ。