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出来がいいかどうかは保障できないが

一式がなかなか量産に移行できず精神的に参っていた時、工場のスタッフの一人が話しかけてくれた。「安原さん。今あなたは一式が本当にできるかどうかたいへん不安だと思うが、心配しなくても良い。出来がいいかどうかは保障できないが、完成することは間違いない」。*1何でそんなことがわかるのかと聞くと、「上からの絶対命令が出ている。予算をいくらオーバーしても必ず完成させろと言われている」と言った。
              ────────安原伸安原製作所回顧録」

著者は中国の工場の後進性・前近代性を表す一例としてあげているが、ぼくはこのスタッフのことばにたいへん感動・共感した。
正直に言って、商売でモノを作るということはこういうことなんだと今の会社で10年かけてぼくは学んできた気がする。


商売というと、何かとコストとか利益とかROEとかビジネスモデルとかそういう話になりがちだけど、結局多少問題があっても、必ず完成させなくてはならないのだ。
「出来がいいかどうかは保障できないが」といふところが実に良い。
やたらクオリティ云々する人間が、時間がたっぷりあっても本当にクオリティを追求できることもまた少ないのだ。


唯々完成だけを信じて、黙々と働く。出来がいいかどうかは、出来てみないとわからない。
職人的かもしれないが、少なくともスタッフである限りは、そういう気持ちで働いていたいと思ふ。

安原製作所回顧録 (えい文庫 158)

安原製作所回顧録 (えい文庫 158)

*1:句点ママ