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小さなお祝い

赤飯という、もはやアナクロな食べ物が好きだ。
数年前母方の祖父が亡くなり、冷めた赤飯のおにぎりを親族が葬儀場で顔を並べて食べた。葬儀で赤飯という習慣があるのか、残念ながら疎いのだが、何年ぶりかに祖父が縁で遠く離れた親族が顔を合わせるということは、赤飯を食べるにふさわしい場のような気がした。それ以来、たまに赤飯が食べたくなる。


こんなことをいうのはちょっと申し訳ない気もするが、私の母は赤飯を作るのは上手ではなかった。父の実家から送られてきたもち米をいつも仕方なさそうに、不器用に蒸していた印象がある。私は米だけでオカズ感のある赤飯は好きだったが、作るのをねだるのを躊躇う雰囲気があった。


赤飯はもち米100%が好みだ。うるち米を混ぜたほうが食べやすいのは、たしかにそうなのだが、もち米100%の、あのどっしりした食感がたまらない。ごま塩をかけず、小豆と米をゆっくりと噛み締め、懐かしい味を認識するとき、やはり自分が田舎もので百姓の裔なのだとしみじみと思う。


あれ以来、「コンテンツ全体から見れば、個人的と言っていいほど小規模ではあるのだけど、相応に厄介で、自分なりに小さな達成感のある仕事」*1を終えると、一人で赤飯にビールで、小さな祝祭をあげることにしている。深夜の公園でコンビニで買った赤飯握りのセロファンをはずし、プルトップを開ける。


昨日、3週連続の出張が終わる帰りの新幹線でも「赤飯弁当」を食べドライで喉を潤おした。

*1:具体的にいっちゃうと、ゲームに収録するムーヴィーとか、関連DVDの編集とか、収益にはそんなに直結しないけど、自分の趣味とユーザー満足を考えるとクオリティを絶対落としたくないそんなヤツ。まぁ、これがしたくてデザイン稼業が続いているんだけどね。