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携帯箸弐種


個人的な趣味でいうと、ハシは塗りより黒檀や紫檀の木の肌触りが残っているものが好きだ。塗りも悪くはない。ただ最近はアクリルコートというものが出てきて使ってみたがやっぱり漆の方がしっくりする。形は極々シンプルなものがいい。黒檀も希少なせいか、なかなか好みのハシにはめぐりあわなくなってきた。


ましてやプラスチックのハシなんて! 最初は使うのに何か抵抗はあった。3月に合気道のお稽古に行ったとき、箸を忘れたので、たまたま息子の通学用デイパックを購入していた石井スポーツで携帯用の箸を買った。500円。スプーンもアタッチメントで取り替えられる。ライダーマンみたいでいい。(写真手前)
そのザックも20リットルでは容量不足で先日34リットルのものに買いなおした。なぜか、おまけです、といって、携帯のハシをくれた。プラスティックのケースに入っている。(写真奥)


縁あって手元に来たからには使わないわけにはいくまい。ひょんなことから、携帯箸を2種類も使うことになったのでその使い心地について記しておきたい。便宜的に前者をグリーン、後者をオレンジとする。

まず、ハシ自体の使い心地について。

  • 持ったときのバランス感はグリーンの方が優れている。しならず接合部もかっちりしている。オレンジはつくりがやわくしなりやすい。接合部も吸着が甘く取れることがある。
  • ハシの先の加工はグリーンが先端部数センチのみナシ地加工。オレンジは溝が彫ってある。重量物を掴むにはナシ地は摩擦が弱いせいか滑りやすい。細かいものに対する操作性は双方良い。

次にケースや周りについて。

  • グリーン付属の袋型は、洗った後、しっかり拭かないと水滴がついて不衛生な気がする。オレンジはその点閉じたら見えなくなるのが良い。
  • オレンジのケースは開けるのが多少固い。が、落としたときにすぐに開いてハシが散らばらないというメリットもある。あと、このケースに分解したハシを並べて収納するのは、何かミニマムな気持ちを刺激するようで楽しい。グリーンの袋はそこらへんが大雑把。


というわけで、会社へはオレンジ、合気道のお稽古にはグリーンという使い分けで運用中。別にエコに格別関心があるわけではない。割り箸には割り箸の役割とかメーカの利益とかあるんだろうしね。そういうのは可能な限り尊重したい。

ハシのお作法

蛇足ながら、ハシについて思うことあれこれ。
ハシの持ち方が悪い人をみるとたいへん気になる。食堂でハシの持ち方が悪いデザイナーは、たいてい鉛筆の持ち方も悪い。ここからは私の偏見だが、ハシの持ち方が明らかに悪いのにもかかわらず、直さないのはずいぶん意固地だなと思う。ハシの持ち方や鉛筆の持ち方は、趣味や個性ではなく、合理の世界だ。合理をいちいち説くのは不合理だからお作法がある。お作法を守らず意固地なのは、伝統への忠誠と柔軟な思考を求められる職種には向かない。


面接などで、鉛筆で円を描かせてみることがたまにあるけど、描かれた円の正円の具合より、鉛筆の持ち方の方が気になる。持ち方さえ良ければ円はいずれうまくなる。


話は飛ぶが、上海で端の先が太いのには最初驚いた。あれはどうなんだろうと思うが、慣れると何とかなった。台湾も太かった気がする。ハシは国によって結構違う。
それでも日常的に使う道具であり、身体の延長でもあるので、可能な限り慣れたもの自分の気に入ったものであって欲しいと思う。木の細工で丈夫で上品な細工物の携帯箸がどこかにあるのかもしれない。