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流通をめぐる新しい試み


「教えていただきたいのですが、この号に何かあるのでしょうか」


おずおずと、しかし、ハッキリと、その子は尋ねた。

夕方、本屋のカウンターでの事だ。
たまたま来月号に、業務上関係している記事が載るかもしれないので、ModelGraphix11月号は買うつもりだった。ところが、11月号と12月号には、ファインモールドゼロ戦が付く。おそらく非常に精密な。予約しておくべきなのか?ちょっと迷う。
で、売り切れは後悔するよな。ということで、予約しようとカウンターへ向かったわけ。


「お客様で、この号の予約がお二人目なので…」


一応説明しておく。ModelGraphixとは模型専門の月刊誌。プラモデルが好きな人ならもちろん知ってはいるが、おそらく予約をしてまで購入する客は、この店では今までいなかったようだ。
それで、いったい何の前触れなのかと、冒頭のいぶかしげな口ぶり。

で、今回は限定の模型が付いおり、再販しない故、非常に貴重かもしれない。と事情を説明。あぁ、コミックとかに付いてるフィギュアの限定品ね。という理解をかすかに示しながら、納得した様子。なんか、ちょっと違うような気がして、もっとキチンと説明したかったんだけど、やっぱあきらめる。
確かに遠くから見たら同じような気もするし。
隣の店長とおぼしき男性も、それなら少し多めに仕入れなくてはね!とすぐにも端末に入力せんばかり。


「お客様に教えていただかないと、こういうのはわかりませんので。ありがとうございました」


AMAZONはとてもすばらしーサービスなんだけど、私は近所の本屋でパラパラと雑誌をめくるのが好きなのだ。だから、どこでも売っていそうな本はできるだけ近所で買うようにしている。リアルな本屋が、これ以上なくなってしまうと本当に困るしね。ただ、ここまで店員の方としゃべるのはあんまりないんで今日は本当にびっくりしたよ。まぁこういうface to faceのコミュニケーションも、まんざらではないか。


ところで今回のModelGraphixなんだけど、普段の倍の価格でどこまで売れるのか、興味あるよね。もし悪かったら、あの本屋さん、返品多くなって申し訳ないな。
でも、新しい顧客・新しい市場・新しい流通を模索する時代ということで、プリンスが新聞にCDをつけたってのをちょっと思い出したよ。当然、ファインモールドも従来の模型屋とひと悶着あったわけだろうし…。

まぁ、いいや。こういうのって、買うことが応援することなので、忘れず買うということで。