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グレゴリー・コレのミルフィーユ


カットが長引き、予約の時間に遅れてしまったが、ランチタイムにはギリギリ間に合った。お店の女性にお詫びをして、一番奥に準備された席につく。本当に申し訳ない。
一息ついてあたりを見回すと、店舗は1Fの奥が8席くらいのテーブルがあり喫茶席になっている。天井が高く明るい採光。ウッディーなファニチャーと静かな海のようなブルーのクロスが目に優しい。こじゃれた店独特の圧迫感があんまりなく、気軽に入りやすいと思った。そのためか、お客さんは若い人だけでなく、乳児を連れたお母さんも、ワイシャツのサラリーマンも、年配の夫婦も、まさに老若男女。ここら辺がパンとケーキが生活に深く根付いた、神戸らしさなのではと思う。地域の文化だよなぁ。こないだ行った代官山のカフェ・ミケランジェロは、地域や顧客層がもっと限定されていていたように思う。それはそれでいいのだけれど。


オーダーは、「海老と帆立のパスタ大葉のジェノベーゼ」と「牛バラ肉の赤ワイン煮ジャガイモのグラタン添え」をお願いする。既にお店のHPで吟味してきただけあって決断が早い。デザートは決めていなかったので食べながら考えることにした。



まずサラダとパンが供される。サラダにはチキンの白いハムとトマトが添えてある。このトマトは小さいけれど非常においしかった。パンは2種類。普通の味とパンプキン味。バターが小皿についてくる。バターの入手難については、いつもお世話になっているムラカワのチーズソムリエさんは、今年の3月頃からバターの発注が通らないってこぼしていたっけ。
幼児の頃、初めての留守番のおりに、こっそり冷蔵庫の中のバターを一缶食べつくした程、本物のバターの風味が好きなぼくではあるが、今ではメタボ怖さにほんの少し味や香りを楽しみ、ほとんど残すことになる。こういうのは最初に下げてもらうのが礼にもかなっており、合理的なのだろうか。悩むところだ。吉兆の食べ残しの再利用はひどい話だけど、日本の外食産業の食べ残しの多さにも心をふさがれる。



メインディッシュは「海老と帆立のパスタ大葉のジェノベーゼ」だ。グリーンが実に美しい。神戸は海に面しているので海鮮もうまい。味付けはメリハリが利いており美味。








カミさんが頼んだのは「牛バラ肉の赤ワイン煮ジャガイモのグラタン添え」。もちろん神戸は牛肉もおいしい。ありがたい話だ。









早々に、メインディッシュを終え、いよいよお目当てのデザートタイム。
それぞれの、前にチョコレートを使ったお菓子が置かれる。
薄い板チョコレートに挟まれた、チョコレートクリーム。ベースはナッツィー。「ミルフィーユ ジバラ」。直線と曲線によって形作られた、寸分の狂いのない空間構成がみごとなミルフィーユである。


ちなみに、ぼくはチョコレートアレルギーで、チョコを食べると咳の発作を起こす。考えてみれば、子供の頃はあまり甘い菓子を食べなかった。虫歯にならないようにという母親の配慮だったのだと思う。そのため、自分の身体がカカオマスへの抗体反応を持つことに気がついたのは結構最近だ。これは少し苦しいのだけれど、含有するカカオマスの品質や濃度によって発作の程度が変わるため、ある意味便利でもある。一般に上質なチョコレートほど、反応は大きいような気がする。


コレのチョコは反応の発生に少し時間がかかったものの、上質なチョコレート特有の苦しみをぼくに与えてくれた。まさに、お勧めの一品である。ただしこれを上品に食べるのは大変苦労する。多分トロルのような大きな口で、パクリと一口で食べるのが一番正しいのかもしれない。残念ながら人間族のぼくにはできないのだけれど。



カミさんの「アプソリュ」は多層構造になっており、スプーンを入れた際の断面が美しい。









コーヒーもトロットして苦目。甘いお菓子を一口食べては、カップを口につける。口中に残る甘みをゆっくりと流し去り、次なる一口を新鮮な気持ちで迎えられる。


場所は神戸のJR元町駅から南へ少し下った本町商店街を西へ数ブロック進んだ角にある。近所にはお菓子やパンの店が多数あり、どの店も独自の世界観を上手に演出している。


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