tQy

「照りうまキャップ」はどこへ行ったか

ちょっと前の話なんだけれど、結婚記念日に、景気よく神戸牛を買って来て、ホットプレートで焼きました。グラム2000円が半額で、そんな高価な肉を食べたのは家族全員が初めてだったので、それはラッキーだったのですが、いいことばかりは続きません。

宴も終わる頃、突然の異臭。プラが燃える臭いの原因は、ホットプレートのコネクター部でした。


ホットケーキの焼き加減は最高で、手作り餃子も皮がパリパリに焼ける秘密は、鏡面加工で熱伝導が大変高い「照りうまキャップ」という触れ込み。家族中でお気に入りのSANYO製ホットプレートだったのですが、5年以上使い表面のテフロンも剥げてきており、そろそろ換え時と思っていました。だからあんまりがっかりはしません。*1


数週間後、次のホットプレートをネットで物色するのですが、売れ筋は多機能のものが多く、中々これというのにめぐり合いません。だいたい我が家では焼肉用の波プレートもほとんど使わないのです。シンプルだけど使いやすい前のホットプレートみたいなやつはないんだろうか?とりあえず、同じメーカーのモノなら良いだろうとSANYOの最新機種をピックアップ。でも、これ、写真で見ると、プレート面にディップルが入っていません。焼き具合はどうなんでしょうか?しかも周囲の筐体デザインが全く異なります。垂直になっていて、全高が高く感じます。


家電店に行けばわかるかもしれません。でも以前近所の店で、「うちのような中規模のチェーン店では、商品を充分に勉強できていない。」といわれがっかりした記憶があります。これはメーカーに聞くのが一番かなと、商品情報のダイヤルへ電話します。以前使用していた商品と、この新商品の使い勝手がどう違うのか、買う前には絶対確認しておきたいところです。


でもダメでした。結局わかったのは、数年前の旧商品は、スペックデータしかオペレータの手元にない。写真はない。新商品は、三面図や写真はあっても、肝心のプレートがテーブル面から何mmのところにあるのか?とかそういう情報もない。ましてや、旧商品と比較しての使い勝手など、全くわからないということでした。このサイズのホットプレートって家族向けだと思うし、子供が使う事を視野に入れたら、鉄板面の高さって、極めて重要な数値だと思うんだけどどうなんだろうか?反対に、普通の家では、全高ってあんまり関係ないよね。


オペレーターの女性と話せば話すほど、ユーザーがこのホットプレートを使ってどんな生活を営むのか、全く考えていないことがありありと分かり愕然としました。一応言っておきますが、オペレーターの女性を責めるつもりはないのです。最後には「事業部から連絡をさせましょうか」とまで言ってくださいました。*2マニュアルの範囲で誠実だったと思います。問題は数年前の商品の情報すら十分にアクセスできるようにせず、新商品に関するトレーニングを現場に全くしない経営方針です。これは全てマネージメントの問題で、マネージメント層がこうした事は不要なコストだと判断している証左にぼくは思えました。


どうも最近、家電商品を購入するとき、数年前のほうが品質が高かったのでは? 選択肢が多かったのでは?と感じる機会が多いように感じます。何か、日本の家電メーカーの体力が、急速になくなっていくような気がします。状況が厳しいのは分かるけど、ユーザーエクスペリエンスを軽視していて今後魅力的な商品開発ができるとはぼくには思えないんですよね。


結局、自分の目で確かめるしかないので、梅田のヨドバシカメラまで行きました。そこでSANYOの新商品を見てまたビックリ!


赤い


プレートが赤いのです。
赤といってもシャアザクのボディのような色。私にはどうしても食欲が沸く色には思えません。しかも表面にディンプルの加工は全くなくフラットな仕上げです。もちろん何か新しい焦げ付き防止の技術なのかもしれません。でも、ここまでくると、とてもチャレンジしてみる気にはなれません。鉄板面も以前より高く感じます。電熱とはいえ熱源体はできるだけ低い位置に安定した配置で設置したいものです。


結局、前回と同等の機種を、まだ販売しているお店をネットで探して購入することにしました。

SANYOのブランドに不信を感じても「照りうまキャップ」はいい商品なんです。5年後、このホットプレートがまた壊れたらどうするんだろう。脆弱なドライブを搭載したドリームキャストを複数買いするマニアさんに、共感の気持ちがふつふつと沸いた瞬間でした。
技術は常に進歩するとは限らない。
ローマ帝国は衰退期に、建築技術や鋳造技術が著しく退行したそうです。


もうこの際だから言っちゃうけど、松下がPanasonicに社名・ブランドを統一することで、こうした国内家電の扱いが極めてぞんざいにならないか、激しく憂慮します。松下が手を抜けば、国内同業他社は横に並びますよね。振り返れば、全国津々浦々まで広がっていたNationlショップって意味があったんだなぁと思います。家電に関しては、実際の商品知識は高かった。やがて消え行く定めかもしれないんだけれど。

●参考サイト

ローマ人の物語 (15) ローマ世界の終焉

ローマ人の物語 (15) ローマ世界の終焉

*1:燃えるっていう状態はかなり問題だとは思いますが。

*2:事業部が答えを持っているとは限らないので、メーカーに聞くのはあきらめました。以前松下の炊飯器でも、最上位機種を買ったけど味がダメだった。なぜ前ほど美味しくないのか?事業部の人は美味しさは主観ですとしか答えてくれなかった。もう新機種はいいから気に入った前の機種を可能な限り続けて買おうとそのとき思った。