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目を開けて──拡張する時間

恥ずかしい話だが、怖いことがあると目をつむってしまう。
勇気ないよね。
で、合気道で投げられた瞬間にも目を固く閉じていた。


昨日のお稽古で、突然、思いついた。
投げられているときも、目を開けていよう。
たぶん、何回か前のお稽古で「投げられるときには息をとめない方が良い」とアドバイスをもらったのがきっかけかもしれない。
ちょっと強く投げられるたびに、「うっ!」とか「グエッ!」とか「ゲハァ〜!」とか、そんな鳴き声みたいな音を発していたんだよね。確かにゆっくり息をはいたりしているとそんなふうにはならない。


で、目を開けることについて、結論からいうと、「投げられている間、目を開けていること」は、やればできた。
そんなに難しくはない。もちろん怖くもない。


天井がブラー効果をかけて流れていく。この映像は見たことがある。3DツールでX軸中心にYZ平面上にカメラを回転させると、確かこういう絵になる。そんなことをぼーっと考えた。


目を開けていると、情報がリアルタイムでたくさんはいってくる。
空中を回転中に掌で地を打ち、身体の軌道を変えることも可能になった。着地時の姿勢制御プランを空中にいる間に色々考えることができるようになった。目が見えているだけで、投げられている間の滞空時間が引き延ばされて感じる。


この文章の中でも、投げられる「瞬間」が「とき」になり「間」に変わった。
つまりは、目を開けて、息をとめないだけで、刹那の瞬間が拡張されたということになるのかもしれない。
これは、単なるリラックスとは違うんじゃないかなと思う。
目で見ることでイメージが時間軸に沿って拡張する、おそらくゆっくりとした呼吸法も不可欠。


そうか。今まで、投げられた時点でスイッチを切って、着地した時点まで全く何もしていなかったんだ。そりゃ、途中で修正できないわけだし、受け身失敗したら痛いよな。


この話しをちょっと得意気にかみさんに話してみた。やればできる子的に。

「天井をそんなにボーっと見ている時点で問題外ね。
スポーツでは視点は常に能動的かつ一定で、意図したものでなくてはならないのよ。」

やれやれ。天性にはかなわんな。