中央遍歴 - tQy

西神中央から千里中央を経てかやの中央へ。千里が関西の、いや日本全国でも、もっとも初期のニュータウン建設だったことは良く知られている。

西神の町開きはそれに20年以上遅れたものになった。
「良く見ておくんだよ。これが20年後の西神かもしれない」
傍らの息子に声をかけるが、彼はモンハンに夢中であまり聞いていない様子。

60年代前半の高度成長期とと80年代中盤のバブル期という時代背景は街の隅々に感じる。だから私は千里を訪れるたびに、未来よりも遠い過去を感じる。
幼少のころの関東の風景を思い出す。雨にぬれ、排ガスに汚れ、黒々としたコンクリートがあの時代を思い出させるのだろうか。建設当時のデベロッパーに関東系の企業が多かったのかもしれない。

千里中央駅のややこしいバス乗り場で、かやの中央行きの専用シャトルバス乗り場を探してしばし迷う。階段をあがり、ハズレの飛び地に出る。
「RPGでもこういうのあるだろ？」
「RPGって何？」
「キャラクターが色々なところに歩いていって敵と出会ったり宝を探すゲームのことだよ。その、モンハンもRPGだよ。」
「あぁ、よくあるよ！でもモンスターがそこにいるかもしれないし、うろうろするしかないんだ」
そう、確かに我々はうろうろするしかない。

正しい階段はフレッシュネスバーガーとドンクの間にあった。なぜかテナントは西神と同じ。奇妙な均質の中に我々ニュータウン住民は絡めとられているような気がする。

光に向けて階段をのぼる。専用シャトルバスではPitapaが使用できた。往復で210円。帰り用には薄茶色の紙に焦げ茶のインク1色で刷ったチケットを下りる際に手渡された。券が雨にぬれてくちゃくちゃになる。息子はなくさないように必死にしまいこむ。私はデジタルマネーとのギャップにくらくらする。

かやの中央は今世紀の初めに街開きが行われた。バブルとその崩壊、その後の停滞期を経た現代の街だ。箕面マーケットパーク・ヴィソラという名前が与えられている。語源を調べたがBionicleのVisorak(ヴィソラック)同様、合成語の類のようだ。5年前の商品は入手が難しいが不可能でもない。
西神より20年先の街であり、デティールもそれにふさわしい。アウトレットパークやシネコンなどをパッケージ化してきたノウハウで設計されているように見える。雨にぬれて黒くにじむコンクリートはここにはない。千里中央から国道を北へ何キロか登った先にある。そういえば、南北道と東西道では、まず南北の道から作られるような気がするなぁ。御堂筋のように。

雨で道路が込んでいたのか、何度も信号につかまる。予定よりも5分遅れの15分行程。霞む大気の中箕面丘陵に広がるビル群はニュータウンの記号どおり未来的だ。そう、第3新東京のように。南を振り向くと真っ直ぐなハイウェイの果てにも林立するビル群がある。あれが千里中央。思えば、西神に向かう地下鉄に乗り、伊川谷あたりで急に山の上にそびえるラ・フォルテの高層建築を初めて見たときも思ったものだ。山上のインダストリアだと。

先ごろ物故したエリック・ロメールの作品「友達の恋人」は1987年公開の作品。舞台は郊外のニュータウン「セルジー・ポントワーズ」。そしてパリと行き来する演出が良いアクセントになっている。パリからは直線で約20マイル。地図で見ると西神〜大阪間ぐらいの距離がある。直通の地下鉄なら1時間前後だろう。映画で見る「セルジー・ポントワーズ」は新しく未来的な街だった。あれから30年どうなっているか、今ならストリートビューですぐに確認ができる。