古い機材のお話
サウンドのスタッフたちと、飲みながらぐだぐだしょうもない話をする。だいたいがエロい話だし、誰かの悪口だったりと、全くろくなことはない。だけど、時々ちょっと真面目なことも話す。昔の楽器、シンセサイザー、エフェクターなど、音楽の機材は、確かに古いんだけど今でも価値があるよねっとか。
そうした機材の中には音自体がとても魅力的だったりするものもあるし、また当時の音を再現することでちょっとしたニュアンスを付け加えたり、彼らは色々便利に使っているようなのです。
一方で、グラフィックや映像の世界で、古い機材やソフトウェアが役に立つってことは、あんまりない。少なくとも、サウンドほど積極的に使う例は、ぼくの周りではありません。
例えば、油彩のドロータッチうごめく表面処理で始まったホテルの廊下にボッシュの「快楽の園」風の絵がかかっていて、主人公が部屋から繁華街を見ていると、一瞬で世界が木炭デッサン風に変転し、キュービズムとしてのブラック、ダイナミックなレジェ、抽象的なピカソのタッチを経て、主人公は絵の中の世界に取り込まれてしまうダンテ天獄遍歴というような、タッチやスタイル、モチーフを過去から借りてくるようなムーヴィーはあるかもしれない*1けど、20年前のMACPAINTを使ったり、STUDIO 32*2を使うことに、2007年現在、意味があるとは思えない。少なくともぼくにはない。そもそもこの手のツールは環境を準備するだけで大変なんだよ。
「だいたい、サウンドの方が何かカッコいいんだよね。」ぼくらデザイナーはちょっとひがんで、締めくくりはいつもこんな感じだ。
例えば、サウンドは自主制作をしたら<<インディーズ>>って言われる。
けど、絵を描く人たちが自主制作をするとなんと言うか?
そう<<同人>>って言われるんだ。